取手駅西口の都市計画原案に関する説明会・公聴会への対応

 駅西口A街区の都市計画原案について、取手市は説明会を4回、公聴会を1回開催しました(取手市の記録は【こちら】)。

 私たち「取手駅前開発を考える会」では、説明会に各メンバーが都合のよい回に出席して質疑に参加すると共に、公聴会にメンバー3名が公述人に応募・出席し意見を述べました。説明会へは個人で参加し記録をまとめていないため、以下では、公聴会の様子と公述人の意見を報告します。

 なお、説明会は「広報とりで」10月1日号に、公聴会は「広報とりで」10月15日号に広報され、公聴会も確かに公開されていました。しかし広報記事は小さく見落としやすく、広報から開催までの期間は短く、また、説明会は行楽シーズンの「秋の三連休」のさなかに三回と平日の夜に一回、公聴会は平日の夜に辺鄙な会場で一回だけと、およそ不親切な設定でした。「考える会」の一人は前々からの予定のため、説明会には出席できず、公聴会に出席するためかなりの無理を強いられました。市に本当に市民に計画を説明し、意見を聞く意志があったのか、強く疑われます。

公聴会

 公聴会は10月31日19時から、市役所分庁舎2階会議室で開催されました。「公開」で傍聴可ですが、辺鄙な会場と常識外の開催時間のためか、傍聴人は僅かでした。市側出席者は中心市街地整備課の職員、公述人は5名(番号で呼びます。1番、3番、5番が「考える会」メンバー)でした。

 市からは、1.公述人の発言に対してここでは応答しない、2.公述人の発言は録音し「録音記録をもとに要約し、報告文書としてまとめ、その後録音データは消去する」、3.公述への市の見解はホームページで公開する、との表明がありました(2.は公述人の質問に対する回答)。つまり市は、公聴会を開きながら、公述人の発言(非公開!)に対する市の見解だけを広報する、と言うことです。傍聴人による録音は禁じられました。  

 しかしこれでは、公述人がどのような意見を述べたのかが記録されず、市の見解だけが、公述人の意見に応答するものかどうかも分からないまま、一方的に広報されることになります。敢えて言えば、いくらでも「市に都合の良い」「公聴会の結果」を広報できるやり方です。市の意志決定の過程の透明性は確保できず、情報公開の原則に反します。私たちは、上記2.を一つのきっかけとして、市議会に「情報公開・公文書管理の改善を求める請願」を行うこととしました。

 そもそも「市民の意見を聞くことが目的」で「その場で応答しない」のであれば、公聴「会」という形式を取る必要はなく、「文書」による公述(電子メール・郵送・手渡しなどで送付)で済むはずです。不特定多数の投稿による「荒らし」は、公述文書の提出条件として申出書と意見要旨の提出を求めておけば防げるでしょう。「文書による公述」の方が公述もその公開も容易であり、公聴会開催よりよほど簡素です。
 現在の「公聴会」制度は、公述人側のハードルを高めて「市民に意見を言いにくくする」方向に機能しているとしか思えません。

公述人の意見の骨子

 公述人1番・3番・5番の発言骨子は原稿から要約したものです(原稿はリンクからご覧下さい)。口頭での公述のため、実際の発言と表現が異なっている場合があります。公述人2番・4番の発言骨子は傍聴人のお一人と公述人5番のメモから再現したものです(括弧内は「考える会」による補足)。ご覧の通り、市の都市計画原案に対する賛成意見は一つもありませんでした。

公述人1番
・公聴会は公述人の意見を聞きおくだけのものであってはならない。都市計画法第16条は「住民の意見を反映させるために必要な措置」と定めている。また、そのような意味を持つ公聴会を平日の夜にやるようなことは今回限りにしてもらいたい。
・説明会では事業の具体的な中身の説明が一切なかった。工事費の概算が示されているのにその積算根拠が示されていない。これではこの再開発事業で駅前環境がどう変わるか、市民にどんな影響を及ぼすのか分からない。市税を使うのだから、きちんと情報を出すべきだ。
・「都市計画運用指針」には「住民参加の機会拡大や情報公開・理由の開示などに意を用いるべき」ことが書かれている。市のこの事業の進め方が、「運用指針」に照らして、これで良いのかは甚だ疑問である。計画の再検討を求める。(原稿は【こちら】)

公述人2番
・交通広場が完成したが、問題がある。先ず、送迎用駐車スペースの台数が足らない。次に、その入り口は2車線だが出口は1車線になっていて、渋滞が起きている。送迎用の駐車場は少なすぎる。
・また、駅前に全体として駐車場が少なすぎる。(再開発ビルに)図書館を入れる計画があるようだが、駐車場が足りるか。駐車場がないと足が向かない。ウェルネスプラザの駐車場も少なすぎて、図書館を入れるとよけいに渋滞する。(図書館については)電子図書館にするなどの方向もある。
・駅ビルに保育園の計画があるようだが、駅に保育園を作るのはどうか?。駅に保育園を作ってしまうと、駅から離れた他の保育園や幼稚園に影響は出てこないのか。子育てとしては弱い(「子育て」は「子育て政策」または「子育て支援」の意か?)。

公述人3番
・この「A街区再開発事業」は事実上官民一体の事業である。だからその都市計画決定手続きとその議論は、市の公共施設整備計画と切り離せない。
・この事業について、市は「広報とりで」に、あたかも決まったかのように「図書館を核とした複合公共施設整備」を広報している。しかし、都市計画決定案では(図書館に触れずに)「再開発ビル内に公共施設を入れる」ことだけを既成事実化し、中身は後から検討としている。これでは辻褄が合わず、行政運営のルール違反である。
・この事業は、事業参加者も計画区域面積も当初計画から縮小しており、また、今に至ってもなお、事業参加者内においても、本計画自体への納得と同意が得られていないと聞く。計画の再検討・見直しが必要である。
・この事業計画は市民への十分な情報開示がなく、市民のニーズも検討されず、市民不在の計画である。公共施設の整備が再開発事業の主要な一部を占めている以上、都市計画決定は市民の合意を得てから行うのが当然のルールである。「先ず箱を買って中身はこれから」は不適切で、改めるべきだ。
・市は再開発事業の決定権者でありながら、事業者が民間である事を理由に開発内容の開示を拒み続け、そのあげくにトップダウンで「図書館を核とした複合公共施設整備」を発表している。「不透明な計画推進」の批判は免れない。地権者にも市民にも、合意形成には情報開示が不可欠である。
・都市計画事業は「公共の福祉に寄与する」ことが目的であり、「都市計画運用指針」は「住民参加の機会拡大や情報公開・理由の開示などに意を用いるべき」ことを求めている。従って、以上の指摘から、決定権者の市長に次のことを求める:
〇本都市計画決定案の決定は中止し、地権者の合意と納得に戻づく計画に見直すこと。
〇見直し計画作成段階の市民への十分な情報公開を行うこと。
〇計画決定案に含まれる図書館等複合公共施設の整備計画は撤回し、再開発事業は、純粋民間事業にゆだねること。(原稿は【こちら】)

公述人4番
・法律やこれまでの経緯はわからないが、都市計画のメリット・デメリットが数字で示されていない。(この計画は)データに基づいたものなのか、根拠は何か。
・駅前のロータリーは改善されていない。現状では混雑していて、ロータリーは良くない。送迎用駐車スペースは3台のみ。バスが着くと降りた乗客で横断歩道は行列になる。
・公共施設、商業施設について、アトレ、リボンビルの他につくることには異論がある。ウエルネスプラザと同じものができるのではないか。
・補助金を使ってつくるというが、市民へのメリット、デメリットが、素人が見てもわかるように示してほしい。

公述人5番
・この計画に問題は沢山あるが、最大の問題はタワーマンション(タワマン)の建設と考える。
・タワマンには「将来建物が老朽化したときには区分所有者も老齢化しており、費用負担などが壁になって建替えができないまま廃墟化する」という指摘がある。実際、104万棟ある築40年以上の「普通の」マンションでも建替えに至っているのは300棟に満たないと言う。今後人口減少と経済規模の縮小が見込まれる中で、持続不可能なタワマンを建てることは、未来の取手市に負債を押しつけることになり、無責任である。
・人口減少が進む中で取手市が持続するためには、継続的に若者を呼び込むか育てる必要がある。しかしタワマンは集合住宅であり、一斉に似た世代の人々が入居するため、継続性がない。やがて建物は古び、駅前は老人のまちになり、取手市の印象を損なう。タワマンは住宅政策としても持続不可能な愚策である。若者の呼び込みはタワマンの建設ではなく行政サービスの魅力によるべきである。
・非住宅棟についても同様である。リボンとりでビルもアトレもテナント募集に苦戦していると聞く。常陽銀行も西口から撤退した。西口衰退の原因も究明しないまま新たにハコ物を建てても同じ轍を踏むだけで、未来の取手市の負債になるだけである。
・桑原開発も同じだが、市の開発計画はせいぜい20年の一時的な賑わいのために莫大な税金をつぎ込み、将来に負債を残すものだ。「あとは野となれ山となれ」という開発計画には賛同できない。計画の再検討を求める。(原稿は【こちら】)

傍聴人のご意見

 公聴会を傍聴されたお一人から、公述人2番、4番の意見について、次のご意見を頂きました:
 「駅前交通広場が開通しても、利用者の意見が全く反映されず、作る側の意見だけで進めた計画だということが浮き彫りになっている。再開発事業計画に対する意見は直接出てこなかったが、このままでいいとは思えない!。市民の皆さんの心の中が垣間見られた公聴会でした」。

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