このページは、取手市が、2024年3月15日の「広報とりで」に発表した「方針」と2月29日にホームページに掲載した資料に基づき、市の方針を解説、批判したものです。しかしその「方針」に基づく「取手駅西口A街区再開発事業」は、2025年2月14日、「停止」となりました(詳しくは【こちら】)。市は開発方針を堅持するとしていますが、以下の「方針」がそのまま復活することはないと思われます。しかし、今後のため、また、市がどのような計画をどのように進めようとし、私たちが何を問題と考えたか、を明らかにしておくため、全文を残すことにします。

 取手市は、3月15日付の「広報とりで」にて、唐突に、次の発表を行いました:「市は、建設が予定されている再開発ビル内に、とりで図書館を機能や規模を拡充して移設し、市民の皆さんが交流・活動できる機能を併せ持った複合施設として整備する方針を決定しました。この移設により、既存の取手図書館は廃止します。取手駅前に訪れる人を増やし、とりで駅周辺の活性化、にぎわいの創出を目指します」(「広報とりで3月15日号」は【こちら】。赤字は「取手駅前開発を考える会」が問題と感じる箇所)。その時の事業の計画や効果予測などの詳細は、取手市ホームページ内の「取手駅西口A街区再開発ビル内複合公共施設整備事業」(【こちら】)で見ることができます。再開発事業は民間の事業ですが、市は、それに関わることを宣言したのです。この「方針決定」が手続き的に問題であることは、下の「●市の「方針」「決定」は頭ごなし」及び【こちら】をご覧下さい。

 その後、資材高騰、人手不足、円安などの影響で総工費は上振れし、再開発ビルの内、住宅棟が若干縮小しましたが、方針は基本的に変わっていません。最新の、12月1日付でパブリックコメント用に公開された資料は【こちら】からご覧下さい。以下に取手市の「方針」を概説します。

「図書館を核とした複合公共施設」の概要

 

 A街区に建設予定の再開発ビル(25階建てタワーマンションと5階建て非住宅棟)のうち、非住宅棟の床を買い、そこに「図書館」と、カフェ・オープンテラス・イベント空間・音楽スタジオ・会議室、多目的ラウンジを併設した「複合公共施設」を整備するとの計画です。上記の想定事業費とは別に「A街区再開発事業」への市からの補助金38億円(但し国が半額補助)が加わり、公共投資の総額は80億円超えになります。

 しかし上記計画は、円安、資材高騰、人手不足が表面化する前のものです。この8月、さっそくマンションが21階建てに縮小、補助金は38億円から48億円へ、市の事業費も増額され、公共投資総額は100億円超えになりました。床購入費は再開発事業者への補助金の性格を持ち、床を購入すれば建物の維持管理への責任が生じます。再開発ビルの総工費は143億円から177億円に増額、その主体をタワーマンションが占めますが、この投資は適正でしょうか。

 運営は「指定管理」を想定とのこと。指定管理とは市が指定した民間業者に施設の管理を委託する方式です。民間企業のノウハウが生かせるとか開館時間を弾力化できるとか、良いことずくめのように言われています。しかし実際には問題が多く、守谷市では一度中央図書館に指定管理を導入して混乱を招き、市直営に戻しています。その経験に学び、取手市でも「図書館に指定管理は導入しない」と言う申し合わせになっているはずです。

 取手図書館はどうなるのでしょうか。「広報とりで3月15日号」では施設内の図書館を「取手駅前図書館」と呼び、わざわざ「既存の取手図書館を廃止」すると書いてあります。また、施設の運営に「指定管理を想定」とあり、「図書館には指定管理を導入しない」という申し合わせを一方的に破棄する姿勢です。一方「事業資料」には「(取手図書館を)A街区再開発ビルへ移設し」とあります(3ページ)。図書館の取り扱いについては決まっていないようです。市議の中には「図書館は一つあれば良い」と言う人すらいます。施設の「核」となる図書館は、取手図書館とは似ても似つかないものになりかねません。

スケジュール計画

 「事業資料」では「A街区再開発事業」のスケジュールを上図のように発表しています。上段の「都市計画決定」とは、都市計画法に基づく手続きにより「まちづくり」に必要な都市施設等の計画を決定することを言います。決定を受けると計画は確定し、後戻りできなくなります。

 都市計画決定の申請では、建築物等の用途は、住宅、商業、公共公益、駐車場など大枠だけを定め、「図書館」など具体的な施設名は書かないとのこと。このため「公共公益」に図書館を入れるという計画は別の計画として策定するとのことです。私たちは非住宅棟に公共公益スペースを入れること自体に疑問を持っていますが、入れるにしても、何を整備するかは都市計画決定後に決めれば良いのなら、立ち止まって考える時間はあるはずです。図書館ではなく、市役所窓口でも、コンサートホールでも、美術館でも、博物館でも、市物産館でも良いのです。市が図書館にこだわる理由は何でしょうか。「事業資料」に説明がありますが、納得のいくものではありません。

 スケジュールは上図より遅れており、8月下旬時点では、都市計画決定は2025年2月の予定とのこと(市のホームページ)。市は決定を急いでおり「ともかく都市計画決定に持ち込んで、今の計画を確定してしまおう」という意図が感じられます。
 都市計画法の運用指針には「都市計画決定手続きに、住民の意見を十分反映させることとし、住民参加の機会の拡大、都市計画に係る情報公開及び理由の開示などに意を用いるべきである」とあります。私たちは、市民として、同都市計画に意見を表明できる機会を早急に作るよう、関係各筋に働きかけを行っています。

市の「方針」「決定」は頭ごなし

 市の「方針」は2月29日に公開されましたが、それまではどこにも明らかにされていませんでした。一般市民ばかりでなく、ほとんどの図書館関係者も「広報とりで3月15日号」で初めて取手図書館の移転と既存館の廃止計画を知り、驚いたとのことです。図書館の整備や廃止を謳っていながら、その管理者である教育委員会で検討・決定がなされたわけではなかったことも明らかになっています。市は「教育委員会に説明した」と繰り返していますが、その記録はなく、また、説明は審議決定ではありません。この計画は、市議会や教育委員会の正規の討議を経ず、頭越しに「決定」されたのです。
 この「方針」が、いつ、どこで、だれが、どのような権限で「決定」したのかは明らかにされていません。

 私たちはこの「方針」について、「決定」の過程、その内容、再開発のありかた、などに非常に多様なレベルで問題を感じており、その一部は本ホームページのトップページの4つのカラムと「こんなにある疑問」(【こちら】)に公開しています。

 私たちは方針決定の過程について、市長と教育長宛に、説明会を開催するよう文書で要請しましたが、拒否されました。

 また、私たちが重要と考える問題について、市議会宛に二件、教育委員会宛に一件の請願を行いました。しかしどの請願も反論や批判どころか実質的にほとんど何の討論もなく、無視に近い状態のまま「不採択」となりました(駅前開発を考える会ニュース No.2〜No.4)。市議会も教育委員会も独立して市に意見できる立場ですが、市の「方針」に意見表明したとは聞いておらず、市の独断専行と言っても良い「方針」を丸呑みするようです。
 市議会、教育委員会の皆さん、それで良いのですか?、しっかりして下さい!。

市議会宛請願
・取手駅西口A街区再開発事業の再検討を求める請願(請願書は【こちら】)
・取手駅西口再開発事業に係る「図書館等複合公共施設整備計画」基本構想に関する請願(請願書は【こちら】)
教育委員会宛請願
・「取手図書館を取手駅前に移設する計画」の再検討を求める請願(請願書は【こちら】)
駅前開発を考える会ニュース No.2/3合併号(【こちら】)、No.4(【こちら】)